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いびき治療に、肥満治療薬は使用できるか? ―記憶力・認知症との関係、そして新しい肥満治療薬

[2026.08.25]

「いびき」だけではない睡眠時無呼吸

―記憶力・認知症との関係、そして新しい治療「ゼップバウンド」

「睡眠時無呼吸症候群は、いびきがひどくなる病気」

そんなイメージを持っている方も多いかもしれません。

しかし、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、睡眠中に何度も呼吸が止まることで、高血圧、心房細動、心不全、脳卒中などだけでなく、脳の健康にも影響する可能性が注目されています。

最近、40~70歳の2,795人を調べた研究では、OSAのある人では記憶機能が低い傾向が認められました。

特に興味深いのは、

治療を受けていないOSA患者では記憶力の低下がみられた一方、治療を受けているOSA患者では、OSAのない人との明らかな差がみられなかった

という点です。

ただし、血圧や肥満などの認知症リスク因子を詳しく調整すると関連は弱くなっており、「睡眠時無呼吸そのものが認知症を起こす」と証明されたわけではありません。

それでも、中年期から睡眠時無呼吸を見つけ、きちんと治療しておくことが、将来の脳の健康を守るためにも大切かもしれないという重要なメッセージです。

睡眠時無呼吸の治療に新しい選択肢

これまで中等症~重症の睡眠時無呼吸では、主に**CPAP(持続陽圧呼吸療法)**が中心でした。

CPAPは、睡眠中に空気を送り込み、気道が塞がらないようにする非常に効果的な治療です。現在も重要な標準治療であることに変わりありません。

一方、肥満を伴う睡眠時無呼吸では、首や舌、咽頭周囲への脂肪蓄積が気道を狭くする原因の一つになります。

そこで注目されているのが、ゼップバウンド(一般名:チルゼパチド)です。

GIPとGLP-1というホルモンの受容体に作用する週1回の注射薬で、体重を減少させることによって、睡眠中の気道閉塞そのものを改善することが期待されています。

実際、無呼吸はどのくらい改善した?

大規模臨床試験「SURMOUNT-OSA」では、肥満を伴う中等症~重症OSA患者を対象に、ゼップバウンドを52週間使用しました。

その結果、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を示す「AHI」は、

  • CPAPを使用していない患者で 約25回/時減少
  • CPAPを使用している患者でも 約29回/時減少

しました。体重も大きく減少し、低酸素状態や血圧、睡眠に関する症状などにも改善が認められました。

つまりゼップバウンドは、単なる「体重を減らす薬」というより、肥満が大きく関係する睡眠時無呼吸の病態そのものを改善する治療として考えられるようになってきたわけです。

日本でも睡眠時無呼吸に使用できるようになりました

日本では2026年5月、ゼップバウンドに

「中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群。ただしBMI 27kg/m²以上」

という適応が追加されました。

ただし、「睡眠時無呼吸で少し太っていれば誰でも使える」という薬ではありません。

厚生労働省の最適使用推進ガイドラインでは、睡眠検査で中等症以上であることに加え、原則として食事・運動療法を一定期間行っても十分な減量が得られないことなど、細かな条件が定められています。また、BMI 27~30kg/m²未満については臨床試験のデータが少ないため、より慎重に適応を判断することとされています。

CPAPとゼップバウンド、どちらがいい?

これは「どちらか一つ」というより、患者さんごとに使い分ける治療と考えた方がよいでしょう。

CPAPは、装着したその夜から気道を開いて無呼吸を抑える治療です。

一方、ゼップバウンドは体重を減らし、首や舌、腹部などへの脂肪蓄積を減らすことで、睡眠時無呼吸を起こしやすい身体的背景そのものを改善していく治療です。

実際、SURMOUNT-OSAではCPAPを使用中の患者でもゼップバウンドによる追加効果が認められています。

そのため、

「CPAPか薬か」ではなく、「気道を守る治療」と「肥満という原因に働きかける治療」をどう組み合わせるか

という視点が今後ますます重要になりそうです。

睡眠を治療することは、将来の健康を守ること

睡眠時無呼吸は、単に「いびきがうるさい」「昼間眠い」というだけの病気ではありません。

心臓や血管、代謝、そして最近では記憶力や認知症との関連まで研究が広がっています。

ゼップバウンドという新しい選択肢が加わったことで、特に肥満を伴う睡眠時無呼吸では、治療の幅が大きく広がりました。

ただし、ここは大切です。

ゼップバウンドによって認知症を予防できることが証明されたわけではありません。

それでも、睡眠時無呼吸を放置せず、体重、血圧、糖尿病、脂質異常症なども含めて中年期からしっかり管理することは、「夜の呼吸」だけではなく、10年、20年先の心臓や脳を守ることにつながる可能性があります。

「大きないびきをかく」「寝ていると呼吸が止まると言われた」「朝すっきりしない」「昼間とても眠い」という方は、一度睡眠時無呼吸の検査を受けてみることをおすすめします。

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