スキルス胃がん
私が研修医だった頃、初めて入院患者として診た胃がん――それはスキルス胃がんでした。
患者は美しい20代の女性。
「なんで私が、、まだこれからなのに……」と涙を流していた姿が、今でも忘れられません。
スキルス胃がんとは?
スキルス胃がん(硬化型胃がん) は、胃の粘膜の下に広がる特徴を持つ進行の早い胃がんの一種です。通常の胃がんとは異なり、胃の内側に大きな腫瘍を形成せず、胃壁の中を広がるため、早期発見が難しく、診断時には進行していることが多い のが特徴です。
スキルス胃がんの特徴
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浸潤性の発育(胃壁を硬くする)
- 胃の内側(粘膜)ではなく、胃の壁(筋層・漿膜)に広がる
- 胃全体が硬くなり、伸び縮みしにくくなる(胃の動きが悪くなる)
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早期発見が難しい
- 内視鏡(胃カメラ)で見ても目立つ腫瘍がないことが多い
- 症状が出にくく、気づいたときには進行していることが多い
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腹膜播種(ふくまくはしゅ)のリスクが高い
- 初期のうちからがん細胞が腹膜に広がりやすく、手術が難しいことが多い
- 肝臓やリンパ節にも転移しやすい
スキルス胃がんの原因・リスク要因
- 遺伝的要因(家族に胃がんの人がいるとリスクが高い)
- ピロリ菌感染(胃の炎症が長く続くことで発生リスクが上がる)
- 食生活(塩分の多い食品、燻製・加工肉などの摂取過多)
- 喫煙・飲酒(発がんリスクを高める)
- ストレスや食生活の乱れ(胃の炎症やダメージが持続すると影響)
スキルス胃がんの症状
スキルス胃がんは 自覚症状が出にくい ため、発見が遅れることが多いです。
以下のような症状が 持続的に ある場合は、注意が必要です。
✅ 初期症状(ほとんど症状なし)
- なんとなく 胃の不快感・重さ がある
- 食べるとすぐにお腹がいっぱいになる(早期満腹感)
- みぞおちの違和感
✅ 進行すると現れる症状
- 体重減少(急激な体重減少は要注意)
- 食欲不振(食べる量が自然と減る)
- 胃痛・腹部膨満感(特に食後に強くなる)
- 貧血(出血を伴う場合、めまいや疲れやすさ)
- 腹水(お腹が張る)(がんが腹膜に広がると発生)
スキルス胃がんの検査・診断
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内視鏡検査(胃カメラ)
- 初期段階では発見が難しいため、生検(組織検査)が重要
- ピロリ菌感染がある場合は、定期的な検査が推奨される
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バリウム検査(胃透視)
- 胃の動きや形の変化を確認
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CT・MRI・PET検査
- 転移の有無や進行度を確認(特に腹膜播種の評価)
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腫瘍マーカー(血液検査)
- CEA・CA19-9 などが上昇することがあるが、確定診断にはならない
スキルス胃がんの治療法
① 手術(可能な場合)
- 早期発見の場合、胃の全摘手術が行われることが多い
- 進行がんの場合、手術単独ではなく化学療法と併用することが多い
② 化学療法(抗がん剤)
- 手術が難しい場合、化学療法(抗がん剤) が主な治療となる
- 最近では分子標的薬(ハーセプチンなど)も使用される
③ 放射線治療(補助的)
- 単独では効果が低いため、他の治療と組み合わせる
④ 緩和治療(腹膜播種などがある場合)
- 腹水や痛みを和らげる治療が行われる
スキルス胃がんの予防
- ピロリ菌の除菌(感染がある場合は、早めの治療が推奨される)
- 定期的な内視鏡検査(特に胃がん家系の人は早めの検査を)
- バランスの良い食生活(塩分を控え、野菜・果物を積極的に摂る)
- 禁煙・節酒(リスクを下げるために重要)
- 適度な運動とストレス管理(胃の健康を保つために大切)
まとめ
✅ スキルス胃がんは進行が早く、発見が難しい
✅ 早期症状がほぼなく、進行すると体重減少・腹水などが出る
✅ 検査は内視鏡+生検が重要(ピロリ菌感染者は特に注意)
✅ 治療は手術+化学療法が基本、進行がんでは化学療法中心
✅ ピロリ菌除菌・定期検査・食生活改善で予防が可能
スキルス胃がんは早期発見がカギ です。家族歴がある方や、胃の違和感が続く方は、定期的な検査を受けましょう!