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新しい薬 SGLT2阻害薬

[2025.03.24]

19世紀のフランスで、リンゴの木の根や樹皮から抽出された物質「フロリジン(Phlorizin)」は、かつて抗炎症薬や解熱薬として使用されていました。しかし当時は、多量に投与すると尿中に糖が出るという副作用があり、その点が問題視されていました。

ところがこの物質の作用に着目し、狭心症を合併する糖尿病患者に投与したところ、その後の心筋梗塞、脳梗塞、さらには全死亡率を劇的に低下させるという効果が確認されました。

その後の研究では、糖尿病の有無を問わず、全身のうっ血の改善、インスリン抵抗性の改善、ケトン体の産生促進、さらに心不全や腎不全の進行抑制といった多岐にわたる効果が認められ、現在では循環器領域においてさまざまな病態に対して第一選択薬とされるようになっています。

薬を飲んでいる人のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

近年では、悪性腫瘍細胞に対する抑制効果や、老化細胞を除去する効果にも期待が寄せられており、応用範囲はさらに広がりを見せています。

医師になって30年以上が経ちますが、これほどまでに多面的な恩恵をもたらす薬が登場したことに、ただただ驚きと感動を覚えます。

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