甲状腺機能低下症は、きちんと治療すれば普段どおり暮らせる?
「甲状腺の働きが低下しています」と言われると、「ずっと体調が悪いままなの?」「寿命に影響するの?」と不安になるかもしれません。
甲状腺機能低下症は、不足したホルモンを薬で補い、適切な状態を維持できれば、一般に良好な経過が期待できる病気です。治療では、薬を飲み続けることとともに、自分に合った量に調整することが大切です。
薬は、体に足りないホルモンを補うもの
甲状腺ホルモンは、体温や心臓の働き、エネルギーの使い方などに関わっています。不足すると、疲れやすい、寒がりになる、便秘が続く、むくむ、といった症状が現れます。
治療に使うレボチロキシンは、この不足を補う薬です。症状だけで量を決めず、血液検査の結果も見ながら調整します。
通常の甲状腺機能低下症では、主に「TSH」という数値を確認します。TSHは、脳から甲状腺へ送られる「もっとホルモンを作って」という指令です。高い場合はホルモン不足、低すぎる場合は薬の効きすぎが疑われます。ただし、脳の下垂体などに原因がある場合は、別の指標で判断します。
薬の量は、一人ひとり違います
必要な量は、体格だけでなく、年齢、甲状腺の働きがどれだけ残っているか、心臓病の有無などで変わります。
若く、心臓病のない方では、必要量に近い量から始められることがあります。一方、高齢の方や狭心症などがある方では、心臓への負担を避けるため、少量から慎重に増やしていきます。
薬を変更しても、血液検査の値が落ち着くまでには数週間かかります。一般に変更後4〜6週間ほどで再検査し、必要に応じて少しずつ調整します。安定した後も、定期的な検査を続けます。
「多く飲むほど元気になる」わけではありません
ホルモンが不足した状態が続くと、体調不良に加えて、心臓や血管への影響が心配になります。一方、薬が多すぎても、動悸や心房細動、骨への悪影響につながることがあります。
英国の約16万人を対象とした研究では、TSHが通常の治療目標である0.4〜4.0 mIU/Lの範囲内なら、範囲内の値の違いによって長期的な健康リスクに大きな差は認められませんでした。つまり、全員が「TSHを2〜2.5に合わせる」必要があるわけではありません。目標は年齢や病状によって調整します。なお、この研究は観察研究であり、治療による寿命への効果を直接証明したものではありません。
同じ量でも、飲み方で効き方が変わります
レボチロキシンは、食事やほかの薬の影響で吸収が変わります。一般には、朝食の30〜60分前に水で飲む方法が用いられます。就寝前に飲む場合は、夕食から少なくとも3時間あける方法が推奨されています。大切なのは、処方時の指示に沿って、毎日なるべく同じ条件で飲むことです。
カルシウムや鉄の薬・サプリメントは吸収を妨げるため、通常は4時間程度あけます。胃薬なども影響することがあるので、使用している薬やサプリメントを医師・薬剤師に伝えてください。
検査が正常でも、つらさが続くときは相談を
「数値が正常になったのに、まだ疲れる」という場合もあります。そのときは、薬を増やす前に、貧血や睡眠の問題、ほかの病気なども確認することが大切です。
また、TSHが少し高いだけで、甲状腺ホルモン自体は正常な「潜在性甲状腺機能低下症」では、すぐに薬が必要とは限りません。再検査で持続するかを確認し、数値の程度、症状、年齢、妊娠の希望などを踏まえて判断します。
甲状腺機能低下症の治療は、自分に合う量を見つけ、その状態を保っていくことが基本です。体調の変化を伝えながら、薬と検査を無理なく続けていきましょう。
