肺がんは「できる場所」で腫瘍マーカーが違う?
「肺がんを調べる血液検査なのに、人によって検査項目が違うのはなぜ?」
その理由のひとつは、肺がんのできる場所によって、考えられるがんの種類が異なるためです。
ただし、場所だけで腫瘍マーカーを決めるわけではありません。正確には、場所やCTの見え方から、がんの種類を予想し、それに合ったマーカーを選ぶという考え方です。
肺の「入り口」と「外側」で何が違う?
肺の中では、空気の通り道である気管支が、木の枝のように細かく分かれています。
太い気管支が肺に入る、根元に近い場所を「肺門部(はいもんぶ)」と呼びます。一方、細い気管支や肺胞が広がる外側の領域は「肺野部(はいやぶ)」で、ここでは特に肺の末梢にできるがんを考えます。
そして、肺門部には扁平上皮がんや小細胞がん、肺の末梢には腺がんができやすい傾向があります。もちろん例外もあり、場所だけで種類を断定することはできません。
場所と種類を手がかりに、検査を選びます
代表的な関係を整理すると、次のようになります。
| がんができやすい場所 | 考えられる主ながんの種類 | 診断の補助に使う代表的な腫瘍マーカー |
|---|---|---|
| 肺の入り口側・肺門部 | 扁平上皮がん | CYFRA21-1(シフラ)、SCC抗原 |
| 肺の入り口側・肺門部 | 小細胞がん | ProGRP(プロジーアールピー)、NSE |
| 肺の外側・末梢 | 腺がん | CEA(シーイーエー) |
これらは、それぞれのがんで上がりやすいマーカーです。「この種類なら必ず上がる」という意味ではなく、ほかの種類のがんで上がることもあります。
例えば、CTで肺の外側に腺がんを疑う影があれば、CEAなどを確認することがあります。肺の入り口付近の影で扁平上皮がんを考えるなら、シフラやSCC抗原、小細胞がんを考えるならProGRPやNSEが手がかりになります。
つまり、検査項目が違うのは、医師が「どんな種類の病気を考えているか」によって、必要な情報が違うからなのです。実際には、場所だけでなく画像や症状なども踏まえ、複数のマーカーを組み合わせる場合もあります。
「正常なら安心」「高ければがん」ではありません
腫瘍マーカーという名前から、「採血すれば、がんがあるか分かる」と思われがちです。しかし、次の点には注意が必要です。
-
肺がんがあっても、マーカーが正常なことがあります。
-
肺がんがなくても、マーカーが高くなることがあります。
-
複数のマーカーを測っても、血液検査だけでは確定診断できません。
例えば、CEAは喫煙やがん以外の病気でも上昇することがあります。また、早期の肺がんでは、マーカーが上がらないこともあります。日本肺癌学会のガイドラインでも、腫瘍マーカーだけで肺がんを見つけようとすることには限界があると説明されています。
最後は、画像と細胞・組織の検査を合わせて判断します
肺がんが疑われる場合は、CTなどで場所や形を詳しく調べ、必要に応じて気管支鏡や針生検などで細胞・組織を採取します。それを顕微鏡で調べ、がんかどうか、どの種類かを確認します。腫瘍マーカーは、この診断を支える補助的な検査です。
検査結果を見るときは、数値だけで判断せず、「何を調べるための検査なのか」「画像の結果と合わせるとどう考えるのか」を、担当医に確認してみてください。
