血圧とコレステロールの薬が、認知症予防にも関係する?
「血圧の薬やコレステロールの薬を飲んでいますが、ずっと続けた方がいいのでしょうか?」
高齢になると、このようなご相談をよく受けます。
最近は、血圧やコレステロールの薬が、心筋梗塞や脳卒中だけではなく、認知症のリスクにも関係する可能性が注目されています。
「スタチン+ARB」が認知症予防に良いかもしれない?
スタチンは、LDLコレステロールを下げる代表的なお薬です。
最近報告された大規模研究では、スタチンを服用している高血圧患者さんの中で、
ARBなどの一部の降圧薬を一緒に使っている人は、別のタイプの降圧薬を使っている人より認知症が少なかった
という結果が報告されました。
認知症リスクは約12%、死亡リスクは約13%低いという結果でした。
特に、ARBを使用している人ではACE阻害薬を使用している人より良い結果がみられています。
「血圧を下げる」という同じ目的の薬でも、脳への作用には違いがある可能性があるのです。
では、ARBに変えた方がよいのでしょうか?
ここは注意が必要です。
今回の研究は、患者さんを無作為に薬ごとに分けた試験ではなく、実際に薬を飲んでいた人を長期間観察した研究です。
そのため、
「認知症予防のために、全員ARBへ変更した方がよい」
とまでは言えません。
他の研究ではACE阻害薬とARBで大きな差がないという報告もあり、現時点では「興味深い可能性が示された」という段階です。
スタチンを飲むと物忘れが増える?
これを心配される方も少なくありません。
スタチンには、アトルバスタチンなどの「脂溶性」と、ロスバスタチンなどの「水溶性」があります。
「脳に入りやすいスタチンは物忘れを起こすのでは?」
と考えられたこともありました。
しかし現在までの研究では、
脂溶性と水溶性のどちらが認知症予防に優れているかは、はっきりしていません。
また、スタチンが認知機能を悪化させるという確かな証拠も現在のところありません。
「高齢になったからスタチンをやめる」は正しい?
これも、とても重要なポイントです。
最新のガイドラインでは、
年齢だけを理由にスタチンを中止しない
という考え方が重視されています。
75歳、80歳を超えていても、
-
心筋梗塞や脳卒中のリスク
-
元気に生活できているか
-
フレイルの程度
-
他の病気
-
服用している薬の数
-
今後どのくらい治療の利益が期待できるか
-
ご本人が何を大切にしているか
などを総合して考えます。
実際、75歳以上の人でスタチンを中止すると、心血管イベントが増えたという研究もあります。
一方で、非常にフレイルが進んでいる方や、余命が限られている方では、薬を減らすことが生活の質を高める場合もあります。
つまり、
「年齢」ではなく「その人全体を見て考える」
ことが大切なのです。
さらに強力なコレステロール治療も
スタチンだけではLDLコレステロールが十分下がらない場合には、PCSK9阻害薬という注射薬を使用することがあります。
大規模研究では、75歳以上の人でも心血管イベントを減らす効果が確認されており、安全性についても大きな問題は認められていません。
高齢だから積極的な治療ができない、というわけではありません。
まとめ
血圧やコレステロールの薬は、
「数字を下げるためだけの薬」ではありません。
心筋梗塞や脳卒中を防ぐだけでなく、最近では認知症との関係についても研究が進んでいます。
特に、
「スタチン+ARB」という組み合わせが認知症予防にも有利かもしれない
という研究結果は非常に興味深いものです。
ただし、まだ「認知症予防のために薬を変更する」という段階のエビデンスではありません。
大切なのは、
血圧、コレステロール、心臓、脳、そしてその人の生活全体を見ながら治療を考えていくこと。
「もう高齢だから薬はいらない」と単純に考えるのではなく、
その薬を続けることで、これからの元気な時間を守れるのか
という視点で一緒に考えていくことが大切だと思います。
