メニュー

運動で認知症は予防できる? ― 歩くこと・ジョギングと脳の健康 ―

[2026.08.11]

「運動は体にいい」とよく言われますが、実は脳の健康にも良い影響を与える可能性があります。

最近の研究では、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を日頃から行っている人ほど、将来の認知症リスクが低い傾向にあることが、数多く報告されています。

ただし、「運動すれば絶対に認知症にならない」という意味ではありません。現在のところ、運動だけで認知症を確実に予防できることを証明した大規模な研究はまだ十分ではなく、主に長期間の観察研究から得られた結果です。

運動している人は、認知症になりにくい?

これまでの研究をまとめると、かなり興味深い結果が出ています。

15の研究、3万3,000人以上をまとめた解析では、身体活動量が多い人は、認知機能が低下するリスクが約38%低かったと報告されています。

また別の解析では、運動量が多い人ではアルツハイマー病のリスクが約40%低かったという結果も出ています。

2026年に報告された米国の大規模研究でも、身体活動量が最も多いグループでは、少ないグループに比べて認知症の発症リスクが低いことが確認されています。

つまり、

「日常的に体を動かしている人ほど、将来の認知症が少ない」

という傾向は、かなり一貫して認められています。

何歩くらい歩けばいいのでしょう?

「では、1日何歩歩けばいいの?」

ここが一番気になるところかもしれません。

約7万8,000人を対象にしたUK Biobankの研究では、歩数が増えるにつれて認知症の発症リスクが低下し、1日約1万歩前後でリスク低下が最も大きくなる傾向が報告されています。

さらに重要なのは、単に歩数だけではなく、ある程度テンポよく歩くことも関係していた点です。

ただし、

「1万歩歩かなければ意味がない」わけではありません。

別の研究では、運動量が少ない人が少し活動量を増やすだけでも、認知症リスクの低下がみられています。運動量を増やしていくと効果は徐々に大きくなりますが、ある程度を超えると頭打ちになる傾向もあります。

大切なのは、

今より少しでも多く動くこと。

まずはここからで十分です。

認知症予防のためには、どのくらい運動すればいい?

認知症予防だけを目的とした「これが唯一の正解」という運動量は、まだ決まっていません。

しかし、現在の研究結果と一般的な運動の推奨を合わせると、一つの目安として、

中等度の有酸素運動を週150~300分程度

が挙げられます。

例えば、

  • 1日30分程度の速歩を週5日

  • 30~60分程度のウォーキングを週4~5日

  • 自転車

  • 軽いジョギング

などです。

少し息が弾むけれど、会話はできる程度の運動をイメージすると分かりやすいでしょう。研究では、週4~5日程度、1回30~60分、中等度~やや強めの運動が一つの実践的な目安とされています。

さらに、有酸素運動だけでなく、筋力トレーニングを組み合わせることも良い可能性があります。

すでに認知症がある人にも運動は良い?

すでに認知症を発症している方についても、適度な運動には意味があると考えられています。

18の臨床試験をまとめた研究では、運動を行った人で認知機能全般の改善が認められました。

別の研究でも、有酸素運動によって認知機能の低下を抑えたり、作業記憶や行動面に良い影響を与えたりする可能性が報告されています。

ただし、ここで大切なのは、

「激しい運動をすれば、より効果が高い」というわけではない

ということです。

認知症のある方を対象にした研究では、強い運動を長期間行っても明確な効果が得られなかったものもあります。

転倒や脱水、心臓への負担なども考え、安全に続けられる範囲で行うことが重要です。

なぜ運動が脳に良いのでしょう?

運動には、脳だけではなく全身にさまざまな良い作用があります。

特に、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの心血管リスクを改善することは、脳の健康を守るうえでも重要です。認知症に関するレビューでも、有酸素運動や筋力トレーニングは、心血管リスクの改善などを通じて認知機能や身体機能に良い影響を与える可能性があるとされています。

つまり、

心臓や血管に良いことは、脳にも良い

と考えると分かりやすいでしょう。

「運動しなければ」と頑張りすぎなくても大丈夫です

認知症予防というと、「毎日1万歩歩かなければ」「ジョギングしないといけない」と思ってしまうかもしれません。

しかし、最初からそこまで頑張る必要はありません。

普段あまり運動していない方なら、

10分余分に歩く
エレベーターではなく階段を使う
少し遠いスーパーまで歩く
散歩の最後の5分だけ速歩にする

そんなところから始めて構いません。

研究でも、運動量の少ない状態から少し活動量を増やすところで、認知症リスクが低下する傾向がみられています。

まとめ

現在の研究からは、

定期的に体を動かす習慣は、認知症予防につながる可能性が高い

と考えられます。

特に中年期以降から、ウォーキングやジョギング、自転車などの有酸素運動を無理なく継続することが大切です。中年期・高齢期の身体活動が、その後の認知症リスク低下と関連するという研究も報告されています。

一方で、運動だけで認知症を確実に防げるわけではありません。運動による一次予防の研究にはまだ限界があり、効果の大きさについては今後さらに検討が必要です。

ですから、大切なのは「認知症にならないために必死に運動する」ことではなく、

将来の自分の心臓・血管・筋肉、そして脳を守るために、今日から少し体を動かす。

そのくらいの気持ちで、長く続けていくのがよいでしょう。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME