No.4 ACNES(腹壁神経絞扼症候群)
ACNES(Abdominal Cutaneous Nerve Entrapment Syndrome、腹壁神経絞扼症候群)は、腹部の表層にある腹壁神経が絞扼されて起こる痛みを特徴とする疾患です。慢性的な腹痛の原因となることが多いですが、内臓疾患との鑑別が難しい場合もあります。
ACNESの主な特徴
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腹痛の性質
- 局所的な腹痛が特徴で、内臓性の痛みとは異なり、特定の点(圧痛点)が存在する。
- 痛みは慢性的に続くことが多く、動作や体位で増悪する場合がある。
- 皮膚感覚の異常(過敏または鈍麻)を伴うことがある。
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原因
- 腹壁の神経(主に第7〜12肋間神経)が筋膜や線維性組織により圧迫されることが原因。
- 手術や外傷後、あるいは明らかな誘因がなく発症する場合もある。
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患者層
- 若年〜中年層の女性に多いとされていますが、どの年齢層でも発症する可能性があります。
診断
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問診と身体診察
- Carnett徴候:腹筋を緊張させた状態で痛みが増強する場合、ACNESを示唆します。内臓性の痛みは逆に軽減することが多い。
- 明確な圧痛点の確認。
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画像診断の役割
- CTやMRIでは異常が確認できないことが多い。
- これらの検査で内臓性疾患が否定されることが重要。
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神経ブロック試験
- 痛みの部位に局所麻酔薬を注射し、痛みが軽減すれば診断の助けになります。
治療
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保存的治療
- 局所麻酔薬注射:即効性があり、痛みを一時的または長期間軽減することがあります。
- 理学療法:体幹筋を鍛えることで症状が改善する場合があります。
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薬物療法
- 神経障害性疼痛の治療薬(プレガバリン、ガバペンチンなど)。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は効果が限定的な場合が多い。
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手術
- 保存的治療で効果がない場合、神経の切除手術を検討します(特に絞扼部位が明確な場合)。
ACNESの重要性
慢性的な腹痛は生活の質を大きく低下させますが、ACNESは適切な診断と治療で症状が改善する可能性が高い疾患です。腹部内臓疾患が否定され、特徴的な症状がある場合には、ACNESを念頭に置くことが大切です。