キリンの心臓
[2024.12.06]
先日、キリンの血圧についてお話ししました。では、そのような高い血圧を生み出すキリンの心臓はどうなっているのでしょうか?
やはり人間とはかなり違った特徴があります。
全身に血液を送り出すのは、心臓の左心室という部分です。この左心室からは、大動脈弁と呼ばれる逆流防止弁を通して、全身の血管に血液が送られます。キリンの左心室は、200~300mmHgという非常に高い血圧を生み出すために、その壁の厚さが約8cmもあります。これは、人間の1~2cmと比べると、圧倒的に厚いことがわかります。
しかし、一度に送り出される血液の量はそれほど多くないようです。左心室の内側の空間がそれほど大きくないためです。
人間の場合、このように左心室の壁が厚くなる状態は「肥大型心筋症」と呼ばれる病気に該当します。この病気では、心不全を起こしやすくなるほか、脳梗塞を引き起こす可能性がある心房細動や、致死性の不整脈(命に関わる不整脈)が発生しやすくなります。これらはどちらも突然死の原因となり得るものです。
ちなみに、キリンには突然死が多いと言われています。本当の死因はまだ明らかではありませんが、心臓を診る医師としては、原因を調べて「いい薬があるよ」と伝えてあげたくなる気持ちになります。