狭心症の患者さんその後
[2025.08.07]
私は循環器医師として、長年にわたり心臓カテーテル検査・治療に携わってまいりました。
そのため、外来には冠動脈治療を受けられた患者さんも数多く来院されます。
若い頃は目の前の病気を治すことに全力を注いでいましたが、長く患者さんとお付き合いする中で、その後の経過や変化も見えてくるようになりました。
冠動脈治療を行うと、冠動脈には物理的な損傷が生じます。体はその傷を修復しようとして細胞を増殖させます。皮膚であれば、かさぶたの下で新しい細胞が増えるため、増殖は限局されますが、血管の中ではかさぶたができないため、細胞が制限なく増殖し、再び血管を狭めてしまうことがあります。
これが冠動脈治療後に起こる「再狭窄」の仕組みで、発生率はおよそ4%とされています。
現在、この再狭窄を完全に予防する薬はありません。ただし、多くは治療から約1年後に発生するため、その時期に検査を行うことで発見が可能です。
この時期を乗り越えると、次の注意時期は5年後前後です。この段階では予防が可能であり、さらに腹部や、脳などに別の病気が発症する場合もあるため、広い視野と嗅覚、そして知識が求められます。
今後も総合内科医として、最新の治療にも精通しながら研鑽を積んでまいります。
今日も勉強です。