新しい治療 心臓に行かないペースメーカの応用
循環器内科医になって以来、私はこれまでに多くのペースメーカーを植え込んできました。
近年では、ペースメーカー技術が心臓だけでなく、パーキンソン病やアルツハイマー病の治療にも応用され始めています。さらに、てんかん発作やうつ病、治療抵抗性の頭痛など、様々な神経疾患に対しても使用が検討されています。
ペースメーカーは「本体」と「リード線」で構成されており、循環器分野では、本体は胸の上部に埋め込まれ、リード線は胸部の血管を通って心臓まで届くのが一般的です。
そんな中、パーキンソン病の患者さんで、リード線が頭の方へ伸びているのを初めて見たときは、思わずギョッとしたのを覚えています。
心臓は自律神経の影響を非常に強く受ける臓器であり、心不全の治療においては、脈拍を抑えるβブロッカーが治療の中心となっています。
最近では、臨床研究としてペースメーカーを応用し、首の血管周囲にある迷走神経を刺激する「迷走神経刺激(Vagal Nerve Stimulation:VNS)」という方法が試されています。これにより心拍を調節し、心不全の症状や心臓のポンプ機能の改善が期待されており、安全性も確認されているようです。
現在は心不全に対するVNS治療の大規模なランダム化比較試験も進行中とのことです。
心不全は心疾患の最終段階とも言われる難しい状態ですが、このような新しい治療法によって、さらに多くの患者さんが救われることを願っています。
今後の進展に大いに期待しています。