帯状疱疹の疑惑
当院には胸痛を訴える患者さんが多数来院されます。心臓病は命に関わることもあるため、私たちは慎重に診断を行っています。しかし、胸痛を診る循環器専門医にとって「鬼門」となる病気があります。
それが 帯状疱疹 です。
帯状疱疹は初期段階では胸痛のみが現れ、しばらくしてから水疱を伴う発赤疹が出現します。
初期の段階では痛みだけが症状として現れるため、その時点で診察すると誤診のリスクがあります。そのため、誤診してしまうと「ヤブ医者」と思われかねません。一方で、発疹が現れれば診断は比較的容易です。また、水疱が破れていて診断が難しい場合でも、専用の検査キットを使えば確実に診断できます。
私たちは胸痛の診察時、心臓病の見逃しを防ぐのと同様に、帯状疱疹の可能性についても常に注意を払っています。
ちなみに、帯状疱疹には最近非常に効果の高いワクチンが開発されました。このワクチンを接種することで、帯状疱疹の発症を50歳以上では 97.2%、70歳以上でも 89.8% 抑制できるとされています。さらに、仮に帯状疱疹を発症した場合でも、帯状疱疹後神経痛(PHN)を抑える効果が 88.8% あります。このワクチンの効果は少なくとも10年間持続することが確認されています(現在、それ以上の効果についても追跡調査中です)。
帯状疱疹にかかってしまうと、約3割の方が長期間にわたり痛みに苦しむことになります。
もし心配な方がいらっしゃれば、ぜひワクチン接種をご検討ください